開発部という立場で製品を扱っていると、
製品に起こった事象「不適合やクレーム」に対して「分析」をする場面に出会うことがあります。
「不適合やクレーム」というとネガティブな印象がありますが、
今回は「分析」という側面に焦点を当ててみます。
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【分析の面白さは『帰納法』】
「評価」(信頼性試験や材料評価)は、「この条件であれば、こうなるはず」という『演繹法』が主役です。
一方で、「分析」は、
✔ 残った痕跡,事象
✔ 形状や分布
✔ 周囲の環境条件
✔ 過去の知見との比較
などなど…
こうした「観察された事実」を積み上げて、「原因」を推定していく、『帰納法』の世界です。
「過ぎた過去を、残された痕跡から読み解く」と表現すると、なんだかちょっと面白そうに感じませんか。
【ある分析の一例】
お客様より、「ショートしているのでは?」と戻ってきた製品、当社で動作確認すると、問題ない様子…。
✔ 事象:ショート様相から良品相当に変化?
✔ 使用環境:湿度の高い環境で、約7年使用
✔ 形状:配線間に一本の線でつながったような痕跡あり
✔ 分布:SEM,EDSによる組成分布の確認
これらを総合的に確認した結果、
「イオンマイグレーションが発生し、析出した銀が剥がれ落ちた」
という推測にいたりました。
(マイグレーションは平面に沿うとは限らず、条件が整えば立体的にも成長するため、剥がれ落ちることもあります。)
「過ぎた過去を、残された痕跡から読み解く」ことができたんです!
分析の面白さ、伝わるでしょうか。
【ある分析の一例】【ちなみに、イオンマイグレーションとは…】
イオンマイグレーションは、
「湿度 × 電圧 × 電解質(金属イオン)」という、「悪条件の三重奏」で起こります。
そして、一般的には銀で起こりやすい事象として知られています。
湿度の高い環境で、電圧差があると、
イオン化した銀が結晶のように析出して、電圧のかかっている反対側へ寄っていく現象です。
まるで、つららのように、細い橋のように、銀が伸びていきます。
でも実はこの銀のつらら、 ずっと伸び続けるわけではありません。
製品中の銀の量も、移動できる経路も、析出できる場所も、どこかで飽和状態となり(サチり)ます。
銀が無限に湧いてくるわけではありません。
(もし、銀が無限に成長するとしたら…、昨今の銀高騰のなか、現代の錬金術!?それはそれで興味深い話ですが。)
さらに、成長が止まる理由は、物理的な量の問題だけではありません。
エネルギーのバランスという視点でも説明できます。
金属イオンが移動して析出するには、
✔ 電界による「押す力」
✔ 湿度による「溶けやすさ」
✔ 析出する際の「形状の安定感」
こうした複数のエネルギーが関わっています。
エネルギーは「偏りすぎた状態」を嫌って、どこかで落ち着こうとします。
たとえば、塩をふったキュウリから水が出てくるのも、濃度差のバランスを取ろうとする浸透圧の働きです。
銀の析出も同じで、どこかで「これ以上伸びてもエネルギー的に得じゃない。エネルギーを消費するだけ。」というところで落ち着きます。
もし、いつまでも銀が伸び続けるとしたら、それはエネルギーの法則を無視したSF映画の世界ですね。
開発部のわたしとしては、
設計パターンから外に飛び出して、落ち着いてしまったAgイオン達の気持ちを聞いてみたい気分になります。
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【分析は技術を深めるプロセス】
今回は、分析の一例として、イオンマイグレーションの例を挙げました。
分析結果は、原因追究を経て、対策へとつながり、当社の技術レベルの深耕にも寄与します。
「分析」は、原因追究であると同時に、「技術を深めるプロセス」でもあるのです。
小さな痕跡をたどるたびに、技術は少しずつ深まっていきます。 その積み重ねが、次のものづくりを支える力になります。
不具合であれ、開発の過程であれ、ひとつひとつの事象を丁寧に分析し、理解し、次の技術へつなげていく。
その地道な積み重ねが、当社のものづくりを支える確かな土台になっています。
(と信じて、日々精進しています。)
(このコラムは、開発部C.H. が担当しました。)
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